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トラウマ(trauma)

心理カウンセリング療法と料金

字義的には身体、心理を問わず、生命の危機を伴う予期せぬ破局的体験による傷つきを指します。

日本では心的外傷体験(ptsd)と同議に使われることが多いです。戦争(テロ行為)、災害、事故、犯罪被害といった自己、身近な他者の生命の危機を経験する単回性のトラウマと、虐待、ネグレクトのように生活環境において日常的に反復される複雑(蓄積)トラウマ(この場合、生命の危機を伴うには至らないものも含む)とに大きく分けられます。

単回性、複雑性を問わず人格形成の上でストレス耐性、空想世界に影響を与えるため、深い病理を形成します。なかでも性的なトラウマは深刻な対人不信と破綻を予測する病態をもたらします。成人期以降のトラウマ体験が精神障害を来たす背景として養育期の環境上の問題の存在が示唆されています。

トラウマ記憶が想起されて認知、思考、情緒といった心的活動に積み重なってしんしゅう的に働くことは、それぞれの動きや働きを拘束し、慢性化すると障害を来たします。

特徴的な病理として、自分自身に責任のない問題について罪悪感を持ったり、対人関係における過剰な気遣いを示したり、トラウマ体験の克服を求めるあまり同種の刺激の回避を怠りがちになる事などが挙げられます。パーソナリティ形成期においてはもちろんのこと、成人してからも悲観的で人の助けを借りられないことはトラウマ受傷者の社会生活を大きく制限します。また、日本における伝統的精神主義のために当事者の弱さとみる社会的偏見もぬぐいきれていません。抑圧的な日本文化との関連もうかがわれます。

治療としては、減感作と認知の是正を中心とした認知行動療法と、トラウマによって発揮はおろか自覚すらされていない「真の自己」を見出し、その実現を図る精神分析な精神療法とが主であり、薬物療法では多くの効果が認められていません。

近代社会においてトラウマが生じるのは本来的には行政が整備すべき社会環境における安全保障の失敗であり、治療に費やすマンパワーの負担のかなりを当事者に帰す現況は社会問題と捉えるべきではないでしょうか。