7人格障害の治療法・支援(カウンセリング・薬物療法・自己対処法)
人格障害(パーソナリティ障害)と聞くと、「治療やサポートが難しいのでは?」と不安に思う方が少なくありません。実際、性格の偏りや長年の思考パターンが深く根づいているため、一朝一夕で改善するものではないことも事実です。しかし、カウンセリングや薬物療法、そして自己対処法を組み合わせることで、生活のしづらさや人間関係のトラブルを軽減することは可能です。
本記事では、人格障害の代表的な治療法・支援の種類についてわかりやすく解説し、それぞれの特徴やメリットを示します。専門用語が登場する箇所では、なるべく例え話を用いながら初心者の方にも理解しやすい形で解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
- なぜ治療や支援が必要なのか?
- カウンセリング(心理療法)のアプローチ
- 薬物療法は必要?メリットと注意点
- 自己対処法(セルフヘルプ)の重要性
- 周囲や家族ができる支援策
- 専門用語の解説
- まとめ:総合的なアプローチで改善を目指そう
1. なぜ治療や支援が必要なのか?
人格障害は「性格そのもの」が極端な方向に偏っている状態ですが、それによって対人関係のトラブルや仕事・学業の継続が困難になるなど、大きな問題が起こりがちです。本人はもちろんのこと、周囲の家族や同僚にも大きなストレスがかかるため、
- 専門的なカウンセリングやサポートを受けて、衝突の少ないコミュニケーション術やストレス対処法を身に付ける
- 必要に応じて薬物療法や自己対処法を取り入れる
といったかたちで、生活のクオリティを上げていくことができます。
例え話
家の基礎が傾いていると、上に立てた壁や屋根にズレやひびが入りやすくなります。人格障害の場合も「心の基礎」が偏っているため、そのままにしておくと対人関係や仕事に歪みが生じやすいのです。しっかりした修復(治療)や支え(支援)を受けることで、家全体(生活全体)の安定を取り戻しやすくなります。
2. カウンセリング(心理療法)のアプローチ
● 認知行動療法(CBT)
- 考え方(認知) と 行動 に着目し、不適応な思考パターンを見直す治療法。
- 自分がどんな「思考のクセ」を持っているのかを客観的にとらえ、行動を少しずつ変えていく。
- 例:「周りが自分を嫌っている」と思い込むクセ → 「具体的にどんな証拠がある? 本当に全員が自分を嫌っているのか?」と検証する練習をする。
● 弁証法的行動療法(DBT)
- 境界性パーソナリティ障害(BPD)など、感情の波が激しく衝動的な行動を起こしやすい人に特に効果があるとされるアプローチ。
- マインドフルネス(今の瞬間に集中する技法)や感情調節スキルなどを学び、極端な思考や行動を穏やかに保つ練習をする。
- 例:「イライラしたとき、すぐに自傷行為や暴言に繋げるのではなく、その衝動を小さな行動に置き換えてみる」など具体的な対策を組む。
● 対人関係療法(IPT)
- 主に対人関係のパターンに焦点を当て、トラブルを減らす方法を学ぶ。
- 「相手に期待しすぎて裏切られたと感じるパターン」や「必要以上に自分を責めてしまいがちなパターン」などを洗い出し、対処スキルを身につける。
ポイント
カウンセリングは長期的に取り組むことが一般的。焦らずに時間をかけ、専門家と協力して自分の思考・行動をモニタリングしていくのがカギです。
3. 薬物療法は必要?メリットと注意点
人格障害は、基本的には「脳機能の一部が直接的に変化する」というより、「性格の偏りや対人認知の問題」が中心となるため、薬だけで根本的な解決ができるわけではありません。
ただし、以下のようなケースでは薬物療法が補助的に役立つことがあります。
- 強い不安やうつ症状を併発している場合
- 抗うつ薬や抗不安薬を使い、感情の落ち込みやパニック発作を抑える。
- 衝動性が極端に激しい場合
- 気分安定薬や抗精神病薬を少量使うことがある。
- 睡眠障害がひどい場合
- 睡眠導入剤などで一時的に睡眠リズムを整える。
例え話
薬物療法は「痛み止め」のようなものです。家の基礎が傾いている(人格障害の根本)場合、その傾きを直すには大掛かりな工事(カウンセリングなど)が必要です。ただ、痛み止め(薬)を使えば、一時的に痛みや不安を和らげることはでき、建て直し工事に集中する余裕を生むかもしれません。
4. 自己対処法(セルフヘルプ)の重要性
● 感情コントロールの練習
- 深呼吸や瞑想、リラクゼーション法を習得し、衝動や激しい感情を少しでも和らげる。
- イライラや不安を感じたときは、まず10秒数えて落ち着く時間をつくるなど、小さな習慣を取り入れる。
● スケジュール管理・ストレス対策
- 自分がストレスを感じやすい環境や状況を把握し、無理のないスケジュールを組む。
- 「いつも疲れているときにイライラが爆発する」という人は、休息や睡眠時間を最優先に確保する。
● 自己肯定感を育てる練習
- 「自分はダメだ」と思いがちな方は、小さい成功体験を積み重ねることを意識する。
- 「今日は○○ができた」など1日の中でできたことを書き留めるだけでも、肯定感を育みやすい。
ポイント
これらの自己対処法は専門家とのカウンセリングと併用すると、より効果的です。自分ひとりで抱え込まず、周囲やプロのアドバイスを取り入れながら、コツコツ続けることが大切です。
5. 周囲や家族ができる支援策
● 理解と境界線の設定
- 批判や非難ではなく、本人が苦しんでいる点を理解しようと努める。
- ただし、何でも言うことを聞くのではなく、**適切な境界線(限度)**を設ける。
- 例:「衝動的にお金を借りようとしてきても、貸せる限度を事前に話し合っておく」など。
● 相談先の情報を共有
- 「こころの健康相談」「自治体の保健センター」「カウンセリングセンター」など、地域やオンラインの専門機関を調べ、必要に応じて案内する。
- 家族や友人が情報を持っておくことで、本人が頼りやすくなる。
● 自分自身のケアも大切
- 家族や周囲の人が疲れ果ててしまうと、支え続けるのが難しくなります。
- 家族向けのサポートグループや専門家への相談など、「支援する側のケア」も忘れずに行いましょう。
例え話
飛行機の酸素マスクは「自分のマスクを先につけてから、子どもを助けましょう」とアナウンスがありますよね。家族や周囲が自分自身をケアしなければ、長期的に支えることはできません。
6. 専門用語の解説
- 認知行動療法(CBT)
- 思考(認知)と行動のパターンに焦点を当て、不適切な考え方・振る舞いを修正する心理療法。
- 例え話:思考の「レンズ」をクリアにし、行動を少しずつ変えていくトレーニング。
- 弁証法的行動療法(DBT)
- 境界性パーソナリティ障害などで効果が高いとされる心理療法。感情コントロールや対人スキルを学ぶ。
- 例え話:強い波が来てもボートを転覆させずに漕ぎ続けるための「漕ぎ方・耐え方」を練習するイメージ。
- 気分安定薬・抗精神病薬
- 衝動性が激しいケースで処方されることがある薬。興奮状態や不安感を一定の範囲に保つ効果が期待できる場合がある。
- 例え話:車のエンジンが空ぶかし状態にならないようにアイドリングを安定させる装置、という感じ。
7. まとめ:総合的なアプローチで改善を目指そう
- 人格障害の治療法・支援は、カウンセリング(心理療法)と薬物療法、そして自己対処法をバランスよく組み合わせるのが基本。
- 家族や周囲の理解・サポートも重要ですが、支える側自身も無理をしないように「周囲の周囲」というサポート体制を作ることが望ましい。
- 「自分の性格だからどうしようもない…」と諦めず、少しずつ生活の質を上げる工夫を続けることで、トラブルを最小限にし、より安定した日常を取り戻すことができます。
● 次に読むとおすすめの記事
- 人格障害の原因・リスク要因|遺伝・環境・心理的背景を解説
- 人格障害の兆候・症状|見極め方とサインの注意点
もし心当たりがあったり、家族・知人のことで悩んでいる場合は、専門家(精神科医や臨床心理士)に相談し、最適な治療・支援プランを考えてみるのがおすすめです。
参考文献・リンク
- DSM-5 (2013年) – American Psychiatric Association
- 厚生労働省:こころの健康 > こころの病気
- 日本精神神経学会
免責事項
本記事は一般情報の提供のみを目的としており、医療専門家による診断・治療を代替するものではありません。実際に心身の不調を感じたり、周囲とのトラブルにお悩みの方は、専門の医療機関やカウンセリングサービスにご相談ください。
まとめ: 人格障害は一筋縄でいかない部分も多いですが、カウンセリング(認知行動療法・DBTなど)や薬物療法、自己対処法、家族・周囲の支援といった総合的なアプローチを組み合わせることで、症状の緩和や人間関係の改善が期待できます。自分や周囲の人が少しでも楽に生活できるよう、焦らずにサポート体制を整えていきましょう。
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◆日本ユング心理学研究所会員
◆日本カウンセリング学会会員
◆日本応用心理学研究所ゼミナール会員
◆中部カウンセラースクールジャスティス総合教育センター修了
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