1人格障害とは?定義・歴史・分類概要【初心者向けガイド】
「人格障害」という言葉を耳にしたことはあるでしょうか。近年、SNSやメディアで話題になることが増え、多くの人が「もしかして自分も…?」「周囲の人に当てはまるかも?」と不安を抱いています。しかし、そもそも人格障害とはどんな概念で、どのように分類されているのでしょうか?
本記事では、初心者向けに「人格障害」の定義・歴史的背景(DSMの変遷)・現在の分類方法(クラスターA/B/C)をわかりやすく解説します。なるべく専門用語をかみ砕きながら説明し、必要に応じて例え話も用いていきますので、このテーマがはじめての方もぜひご覧ください。
目次
- 人格障害(パーソナリティ障害)とは?
- 人格障害の歴史:DSMの変遷をざっくり解説
- DSM-5によるクラスターA/B/Cの分類
- 3-1. クラスターA(奇異・風変わりタイプ)
- 3-2. クラスターB(劇的・感情的タイプ)
- 3-3. クラスターC(不安・恐怖タイプ)
- 専門用語の意味をわかりやすく解説
- まとめ:人格障害を正しく理解するために
1. 人格障害(パーソナリティ障害)とは?
● 「人格」とは?
「人格」とは日常で言う「性格」「考え方」「行動の傾向」とイメージが近く、専門的には「パーソナリティ」と呼ばれます。たとえば、あなたが友人といるときの振る舞い、仕事の場面での行動パターン、趣味の好みなど、「いつもこういう感じだな」と自分や周囲が認識している特徴のことです。
● 人格障害(パーソナリティ障害)の定義
人格障害(パーソナリティ障害) は、下記のような特徴を持つ、長期にわたる行動や思考の傾向のことを指します。
- 周囲の人間関係や社会生活において、持続的に困難が生じる ほど偏った考え方や行動パターンが続く
- 本人自身も苦しみを感じたり、周囲が大きなストレスを受けたりするほど、柔軟性に欠ける
- 通常の成長過程や環境ではなかなか変化しにくい
よく「気質が激しすぎる」「周囲とトラブルになりがち」といった特徴をイメージされますが、実際にはさまざまなタイプが存在し、症状や影響の出方も多様です。
例え話:
性格は料理の「味付け」に例えられます。私たち1人ひとりが違うレシピで「心の味付け」を持っている状態です。通常は様々な調味料や加減で味を調整できますが、人格障害の場合、特定の調味料が極端に強すぎるために人間関係がうまくいかなかったり、自分が疲れてしまったりするイメージです。
2. 人格障害の歴史:DSMの変遷をざっくり解説
人格障害がどのように捉えられてきたかを理解するには、アメリカ精神医学会が作成した「DSM(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)」という診断マニュアルの歴史が欠かせません。
- DSM-I(1952年):精神疾患の診断基準を初めてまとめた文献。当時は「パーソナリティ障害」概念もシンプルで、詳しい分類はあまり確立されていませんでした。
- DSM-III(1980年):人格障害の概念が整理され、複数のタイプが定義されるようになりました。
- DSM-IV(1994年)〜DSM-5(2013年):より厳密な診断基準が整備され、一般的に認知される 「クラスターA/B/C」 の分け方が広く使われるようになりました。
● DSM-5では “クラスター分類” が主流
現在、DSM-5(2013年改訂) においては、人格障害は大きく クラスターA・B・C の3つに分類されます。それぞれ「奇異で風変わり」「感情的で移り気」「不安や恐怖が強い」といった特徴があります。次章で詳しく見ていきましょう。
専門用語メモ:DSM
「DSM」は米国精神医学会が作った「精神障害の診断と統計マニュアル」の略称です。世界的にも標準的な診断ガイドラインとして使われています。
3. DSM-5によるクラスターA/B/Cの分類
DSM-5での分類は、人柄や行動パターンの特徴に基づき、クラスターA・B・C の3群にまとめられます。
名前だけ見ると難しく感じますが、「ざっくり性格傾向ごとにグループ分けしている」と理解してください。
3-1. クラスターA:奇異・風変わりタイプ
- 妄想性パーソナリティ障害(Paranoid Personality Disorder)
- 周囲の人や状況を常に疑ってしまう傾向
- 小さな言動や状況を「自分への悪意」と考えてしまいやすい
- シゾイドパーソナリティ障害(Schizoid Personality Disorder)
- 人づきあいへの興味が薄く、孤立しがち
- 感情表現や対人関係にあまり関心がない
- 失調型パーソナリティ障害(Schizotypal Personality Disorder)
- 奇抜な思考や行動様式が特徴
- 現実にはないものを信じてしまうなど、やや幻覚に近い発想をもつこともある
例え話:
クラスターAは「独自すぎるルールや感覚」を強く持っているイメージです。たとえば、ゲーム好きの友人が自分だけの特殊ルールで遊んでいるような状態で、周囲が「どういうこと?」と感じることが多いため、うまく溶け込めず孤立しがちになります。
3-2. クラスターB:劇的・感情的タイプ
- 反社会性パーソナリティ障害(Antisocial Personality Disorder)
- 他者の権利を無視した行動を取りがち
- 衝動性や法の逸脱などがみられる
- 境界性パーソナリティ障害(Borderline Personality Disorder)
- 対人関係が極端に不安定、感情の揺れ幅が激しい
- 見捨てられ不安や衝動的行動が顕著
- 演技性パーソナリティ障害(Histrionic Personality Disorder)
- 強い注目欲求や感情表現の大げささ
- 周囲の関心を得るために行動をエスカレートさせる
- 自己愛性パーソナリティ障害(Narcissistic Personality Disorder)
- 自分が特別だという思い込みが強く、他者を見下す
- 過剰な賞賛を求め、批判に非常に弱い
例え話:
クラスターBは「感情のブレーキ」が効きにくかったり、対人関係において「振れ幅」が大きいのが特徴です。例えるならば、アクセルを踏み続けるスポーツカーのような状態で、時に周囲も巻き込む大事故になりやすいとも言えます。
3-3. クラスターC:不安・恐怖タイプ
- 回避性パーソナリティ障害(Avoidant Personality Disorder)
- 否定的な評価への恐れが強く、対人場面を避ける
- 自己否定感が強く、失敗を極度に恐れる
- 依存性パーソナリティ障害(Dependent Personality Disorder)
- 常に誰かに世話をしてもらいたがる
- 自分で決めることに強い不安を感じる
- 強迫性パーソナリティ障害(Obsessive-Compulsive Personality Disorder)
- 完璧主義・秩序に異常なまでにこだわる
- 柔軟な対応が困難で、物事を融通利かせられない
例え話:
クラスターCの特徴は「ビクビク型」とも言えるくらい、不安や恐怖に飲み込まれやすいイメージです。たとえば、常に「間違えたらどうしよう…?」と心配ばかりで、行動する前に疲れ果ててしまう人も少なくありません。
4. 専門用語の意味をわかりやすく解説
この記事の中でいくつか専門用語が出てきましたが、心理学初心者の方向けにもう少し丁寧に解説しておきましょう。
- DSM(ディーエスエム)
- アメリカ精神医学会(APA)が発行する精神障害の診断マニュアル。
- 世界中の専門家が参考にする“基準書”です。
- 例え話:「教習所の教科書」のような位置づけ。車の運転ルールを一元的にまとめているイメージです。
- パーソナリティ(人格)
- 性格・行動・思考様式など、比較的一貫性のあるパターンのこと。
- 例え話:「心の味付け」や「自分ならではのクセ」と覚えるとわかりやすいでしょう。
- クラスターA/B/C
- 人格障害を性格的特徴で3つのグループに分けたもの。
- 例え話:スーパーの売り場で「野菜コーナー」「肉コーナー」「魚コーナー」に分けるようなもの。大きな特徴でざっくりグルーピングしていますが、個々の種類によって違いがあります。
5. まとめ:人格障害を正しく理解するために
- 人格障害とは?
長期にわたって偏った思考・行動パターンを持ち、本人や周囲に深刻な問題をもたらす状態です。 - 歴史的背景
DSMの改訂に伴い分類や診断基準が整理され、現在はDSM-5で「クラスターA/B/C」に大別されます。 - クラスター別分類
- A(奇異・風変わり):妄想性、シゾイド、失調型など
- B(劇的・感情的):反社会性、境界性、演技性、自己愛性など
- C(不安・恐怖):回避性、依存性、強迫性など
● 正しい知識とサポートが鍵
人格障害は適切な支援や治療アプローチによって、生活のしづらさを軽減したり、人間関係のトラブルを減らすことが可能です。大切なのは「本人の努力が足りないせい」と責めるのではなく、専門家の力を借りる、周囲が理解を深める、といったサポート体制です。
今後の参考リンク
- 人格障害の原因・リスク要因:遺伝的な要素や育った環境、心理的背景が複雑に絡んでいます。
- 人格障害の治療・支援方法:カウンセリング(DBT、認知行動療法など)や薬物療法、セルフヘルプなど。
もし「自分かもしれない」と不安を感じたり、周りの方のことで悩んでいるなら、専門の医療機関やカウンセリングサービスを活用するのもひとつの手です。
あとがき
はじめて「人格障害」のことを調べる方にとっては、専門用語が多く難しく感じるかもしれません。しかし、基本的な定義や歴史、クラスター分類を理解しておくと、関連する情報を整理しやすくなります。
これからも当サイトでは、心理学初心者の方にも分かりやすい記事を随時発信していきますので、興味のあるテーマがあればぜひご覧ください。また、「具体的にどんな症状が出るの?」「治療はどう進める?」といった疑問がある場合は、関連する記事や専門家の相談窓口をチェックしてみてください。
免責事項:
本記事は医療専門家による診断や治療を代替するものではありません。あくまで一般的な情報提供を目的としています。心身の不調が疑われる場合は医療機関へご相談ください。
【参考文献】
- DSM-5 (2013年版) – American Psychiatric Association
- 厚生労働省 こころの健康 > こころの病気
- 日本精神神経学会
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◆日本ユング心理学研究所会員
◆日本カウンセリング学会会員
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◆中部カウンセラースクールジャスティス総合教育センター修了
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