8家族・周囲の対応策|人格障害のある人とのコミュニケーションポイント
「家族や友人に人格障害(パーソナリティ障害)の特性があり、どう接すればいいか悩んでいる…」――こうした相談は決して少なくありません。
人格障害そのものは、本人だけでなく周囲の人にも大きなストレスや混乱をもたらすことがあります。しかし、適切な知識と対応策を身につけることで、トラブルを最小限に抑え、より良いコミュニケーション関係を築くことが可能です。
本記事では、**「家族・周囲の対応策」「コミュニケーションのヒント」**を中心に、初心者の方にもわかりやすく解説します。専門用語が出てくる場合は、なるべく例え話を交えながら説明していきますので、ぜひ参考にしてください。
目次
- なぜ周囲の対応が重要なのか?
- まずは理解する:人格障害の特徴をおさらい
- 家族・周囲が気をつけたい3つのポイント
- 3-1. 境界線をしっかり設定する
- 3-2. 批判よりも共感・傾聴を心がける
- 3-3. 必要に応じて専門家に相談する
- コミュニケーションの具体的なヒント
- 専門用語の解説
- まとめ:周囲が適切なサポートをすることで関係は変わる
1. なぜ周囲の対応が重要なのか?
人格障害を抱える本人は、自覚が薄かったり「自分のやり方に問題があるとは思えない」という意識を持ちやすい傾向があります。そのため、自ら積極的に治療やカウンセリングを求めないケースも珍しくありません。
一方、家族やパートナー、友人など周囲の理解やサポートがあれば、
- 過度な衝突やトラブルを減らす
- ストレスを溜め込まずにコミュニケーションができる
- 本人が必要な専門家の元へ行くきっかけを作れる
など、多くのメリットがあります。
「本当に本人が変わってくれるのか…?」と不安を抱えるかもしれませんが、周囲がどのように関わるかで状況が大きく変わることは決して少なくありません。
2. まずは理解する:人格障害の特徴をおさらい
人格障害(パーソナリティ障害) とは、長期間にわたって極端な性格の偏りがあり、そのために対人関係や社会生活で深刻な問題が生じる状態です。代表的な特徴としては、
- 感情の起伏が激しく、すぐに争いになる
- 周囲を強く疑ったり、見捨てられ不安で束縛が激しい
- 他者をコントロールしようとする or 依存しすぎる
- 完璧主義が強く、柔軟性に欠ける
などが挙げられます。
これらの性格的偏りは**「努力が足りない」や「単なるわがまま」**というレベルを超えており、専門的なアプローチが必要になる場合が多いのです。
例え話
性格の偏りを「車のハンドルの故障」に例えることができます。普通なら曲がれるカーブでも、ハンドルが極端に曲がりにくい(または曲がりすぎる)ため、周囲の車や歩行者としょっちゅうトラブルを起こしてしまうイメージです。本人に悪気があるわけではなく、「車(性格)の構造」に問題がある状態と考えると理解しやすくなります。
3. 家族・周囲が気をつけたい3つのポイント
3-1. 境界線をしっかり設定する
人格障害をもつ方は、他人との距離感が適切に保てないことがあります。たとえば、過度に干渉してきたり、金銭的・時間的な要求をエスカレートさせたりと、周囲を振り回す行動が続くケースも。
このような場合、**「ここまでは協力できるが、これ以上は無理」**という線引きを明確にすることが大切です。
- 「家族としてサポートはするけど、深夜の呼び出しには対応できない」
- 「仕事に支障が出るため、電話は夜10時以降は出られない」
など、具体的なルールを決めておくとお互いのストレスが減ります。
例え話:境界線
飛行機の中で「酸素マスクは自分が先につけてから子どもを助けましょう」と言われるのと似ています。周囲の人が先に倒れてしまうと、結局、本人も助からない状況になる可能性が高いのです。
3-2. 批判よりも共感・傾聴を心がける
人格障害のある方は、「自分を攻撃されている」と感じやすい特徴があります。周囲が本人を責めたり否定的な言い方をすると、対立が深まり、かえって相手の行動がエスカレートするケースもあります。
- 「それはダメ」「わがままだ」 → 相手はさらに怒りや不安を募らせる
- 「そう感じるのはつらいよね」「気持ちはわかるよ」 → 相手は安心感を得て、話を聞きやすくなる
もちろん、なんでも肯定すれば良いわけではありませんが、まずは相手の気持ちに耳を傾ける姿勢が大切です。
3-3. 必要に応じて専門家に相談する
人格障害の特性が強い場合、家族や友人だけで解決するのは難しいことが多いです。思い切って精神科医やカウンセラー、ソーシャルワーカーといった専門家の助けを借りましょう。本人が拒否しているなら、周囲の人だけでも相談する価値があります。
- 「カウンセリングにどう誘導すればいい?」
- 「家族ができる対応はどこまで?」
- 「緊急事態(自傷行為や暴力など)のときの対処法は?」
こうした疑問に対して、プロの視点から具体的なアドバイスをもらうことで、周囲が抱える不安を軽減し、より適切な方法を見つけられます。
4. コミュニケーションの具体的なヒント
- 「Iメッセージ」を活用する
- 「あなたはいつも○○だ!」ではなく、「私が○○と感じてつらい」という形で自分の感情を伝える。
- 相手を攻撃する言い方を避けることで、対立を和らげられる。
- 穏やかな声のトーン・表情
- 感情が高ぶると相手も攻撃的になりやすい。
- できるだけ落ち着いたトーンで、相手の話を遮らずに「うんうん」と聞く姿勢を示す。
- 具体的な行動提案をする
- 「どうしたらもっと楽になれると思う?」と相手に考えさせてみる。
- 「今すぐ精神科に行ってよ!」ではなく、「一度相談だけでも受けてみたら?」という柔らかい誘導を心がける。
- すべてを背負い込まない
- 相手の人生をすべて背負って助けることは難しい。
- 限界を超える前に、家族や友人間で連携したり、公的機関のサポートを活用したりと、責任を分散する工夫が必要。
例え話:チームプレイ
一人のサッカー選手がゴールキーパーもフォワードも全部やろうとすると疲弊してしまいますよね。家族や周囲が連携して「パスを回す(相談先を紹介する)」「ディフェンスをカバーする(本人の負担を減らす)」などのチームプレイが大切です。
5. 専門用語の解説
- 境界線(Boundary)
- 自分と相手の領域・責任を明確に分けること。
- 例え話:家の敷地にフェンスを立て、「ここから先は立ち入り禁止」と示すイメージ。自分が守れる範囲をはっきりさせる。
- Iメッセージ
- 「あなたが○○だから…」ではなく、「私は○○と感じている」という主体的な表現方法。
- 相手を責める形にならないため、コミュニケーションの衝突を緩和しやすい。
- 共依存(きょういぞん)
- 相手を必要以上に助けたい・支配したいという気持ちと、相手の依存を相互に強め合ってしまう状態。
- 例え話:片方が「水を汲む役」、もう片方が「コップを持つ役」をずっと続け、どちらもそれなしでは生活できなくなるイメージ。
6. まとめ:周囲が適切なサポートをすることで関係は変わる
- 家族や周囲の対応が人格障害の症状を軽減したり、本人のストレスを和らげる大きな手がかりになる。
- 境界線をしっかり設定することで、自分たちが疲れ果てないように守ることが大切。
- 批判・否定よりも共感・傾聴を優先し、本人が安心して話せる場を作る。
- 必要に応じて専門家や公的機関の力を借り、周囲だけで抱え込まないようにする。
● 次に読んでほしい記事
- 人格障害の治療法・支援(カウンセリング・薬物療法・自己対処法)
- 人格障害の原因・リスク要因|遺伝・環境・心理的背景を解説
周囲の関わり方が変わるだけで、本人の態度や状況が驚くほど改善することもあります。まずは「何でも自分が背負う」のではなく、境界線を大切にしながら柔軟にサポートしてみてください。
参考文献・リンク
- DSM-5 (2013年) – American Psychiatric Association
- 厚生労働省 こころの健康 > こころの病気
- 日本精神神経学会
免責事項
本記事は情報提供を目的としており、専門家による診断や治療を代替するものではありません。実際に深刻なトラブルや精神的負担を感じる場合は、医療機関やカウンセリングサービスに早めにご相談ください。
まとめ: 人格障害を持つ人と接する際、周囲が上手にコミュニケーションを取ることは、相手の回復や生活の安定にも直結します。衝突を避けつつ、サポートしやすい環境を整えることで、**家族全体や周囲も含めた“安心できる関係性”**を築くことが可能です。まずは境界線や共感の姿勢を意識しながら、必要に応じて専門家の力を借りてみてください。
さらに詳しく知りたい方へ:「人格障害の基礎知識(総合ガイド)」はこちら
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愛知県名古屋市の心理カウンセラー 浦光一
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愛知県名古屋市の心理カウンセラー 浦光一
心理士/統合失調症研究員/ユング心理学者 / 夢分析研究員 / 心理カウンセラー
◆日本ユング心理学研究所会員
◆日本カウンセリング学会会員
◆日本応用心理学研究所ゼミナール会員
◆中部カウンセラースクールジャスティス総合教育センター修了
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