5代表的な人格障害の種類(クラスターA・B・C)と特徴を徹底解説
「人格障害(パーソナリティ障害)」は、対人関係や社会生活で大きな問題を生じるほど極端に偏った性格傾向を指します。
この記事では、クラスターA・B・Cという分類に沿って、代表的な人格障害の種類をそれぞれ紹介します。「この特徴はどのタイプに当てはまるの?」「自分や身近な人に見られる傾向は?」という疑問をお持ちの方は、一覧・早見表としてぜひ活用してください。
目次
- 「クラスター」とは? ざっくり理解するためのポイント
- クラスターA:奇異・風変わりタイプ
- クラスターB:劇的・感情的タイプ
- クラスターC:不安・恐怖タイプ
- 代表的な人格障害の一覧表
- 専門用語解説
- まとめ:まずは全体像をつかもう
1. 「クラスター」とは? ざっくり理解するためのポイント
「クラスター(cluster)」という言葉は、「類似の性質を持つものをまとめたグループ」 という意味です。人格障害の診断基準書であるDSM-5(アメリカ精神医学会のマニュアル)では、A・B・Cの3つのクラスターに分けて整理されています。
- クラスターA:奇異(きい)・風変わりなタイプ
- クラスターB:劇的・感情的で移り気なタイプ
- クラスターC:不安・恐怖が強いタイプ
● 一覧・早見表的に押さえよう
各クラスターに属する人格障害には、共通した性格傾向があります。たとえば、クラスターAなら「周囲から見るとちょっと変わっている」。クラスターBなら「感情が激しく波がある」。クラスターCなら「ビクビク・不安が強い」…といった感じです。人格障害の各クラスター表は、このページの下部にまとめています。
例え話
スーパーの売り場を想像してみてください。肉コーナー、魚コーナー、野菜コーナーといったように、似た性質のものをグループ分けしているイメージです。肉コーナーでも、鶏肉・牛肉・豚肉などさらに細かい種類があるように、クラスターの中にも複数の人格障害が存在します。
2. クラスターA:奇異・風変わりタイプ
クラスターAに属する人は、周囲から見ると「風変わり」「独特」と感じられやすいのが特徴です。
主に次の3つの人格障害が挙げられます。
1) 妄想性パーソナリティ障害(Paranoid PD)
- 常に他者を疑いがちで、「裏切られるかも」「攻撃されるかも」と警戒する
- 誤解や被害意識が強く、周囲から“扱いにくい”と思われることが多い
2) シゾイドパーソナリティ障害(Schizoid PD)
- 人づきあいや感情表現への興味が薄い
- 孤立を好み、内面的な世界に閉じこもりがち
- 他者からみると「冷淡」「無関心」に見えることが多い
3) 統合失調型パーソナリティ障害(Schizotypal PD)
- 奇抜な思考や言動が特徴
- 幻想的な世界観や独特の信念を持っている
- 周囲に理解されず浮いてしまいやすい
ポイント
クラスターAの人たちは、“理解されにくい・とっつきにくい”印象を周囲に与えがち。そのため、人間関係が狭まり、さらに孤立感が深まってしまうこともあります。
3. クラスターB:劇的・感情的タイプ
クラスターBは、「感情表現が激しく、対人関係の波が大きい」のが特徴です。周囲を巻き込みながらトラブルやドラマが生じやすいため、最も目立ちやすいクラスターともいえます。
1) 反社会性パーソナリティ障害(ASPD)
- 社会的ルールや他者の権利を無視する行動が続く
- 衝動性が高く、犯罪行為にも抵抗がない場合がある
- 子どもの頃(15歳以前)からの問題行動が背景にあることが多い
2) 境界性パーソナリティ障害(BPD)
- 対人関係が不安定で、見捨てられ不安が強い
- 強い感情の起伏・衝動的行動(自傷行為など)が現れる
- 「大好き → 大嫌い」といった極端な感情の変化が特徴的
3) 演技性パーソナリティ障害(HPD)
- 過度に注目を集めたがる(ドラマティックに表現する)
- 感情表現が大げさで、人目を惹くために行動がエスカレートしがち
- 周囲からすると「いつも騒動を起こしている」と映ることも
4) 自己愛性パーソナリティ障害(NPD)
- 自分は特別だという思い込みが強く、他者を見下しがち
- 過剰な称賛を求め、批判に非常に弱い
- 内面には「自分は大したことないかもしれない」という不安を抱えるケースも
例え話
クラスターBの人を車に例えるなら、「アクセルとブレーキの調整が苦手で、ときに暴走してしまうスポーツカー」というイメージです。勢いがあり華やかに見える一方、事故(トラブル)が多いのも特徴です。
4. クラスターC:不安・恐怖タイプ
クラスターCは、「強い不安感」が主軸にあるタイプ。周囲から見ると、「ビクビクしている」「心配性で動けない」という印象を受けることが多いです。
1) 回避性パーソナリティ障害(Avoidant PD)
- 否定的な評価を過度に恐れ、対人関係や新しい挑戦を避けてしまう
- 「失敗するくらいなら最初からやらないほうがいい」という思考
- 自分に自信が持てず、劣等感を抱えている
2) 依存性パーソナリティ障害(Dependent PD)
- 常に誰かに世話を焼いてもらいたがる
- 自分で決定することに大きな不安を感じ、「この人がいないと生きられない」となりやすい
- 強く頼りすぎるため、相手が疲弊してしまうケースも多い
3) 強迫性パーソナリティ障害(OCPD)
- 完璧主義・秩序へのこだわりが強く、柔軟に対応できない
- 細部にこだわりすぎるあまり、期限に間に合わない/臨機応変な判断が苦手
- 他人のやり方を認められないなど、対人関係でトラブルが起きがち
例え話
クラスターCの人を「ビクビクして身動きが取りにくくなっている人」とイメージしてください。たとえば“水たまり”を見つけて足止めされ、「どうしよう、靴が汚れたら…先へ進むのが怖い」と、なかなか動き出せないような状態です。
5. 代表的な人格障害の一覧表
クラスター | 代表的なパーソナリティ障害 | 主な特徴 |
---|---|---|
A (奇異) | 妄想性(Paranoid) シゾイド(Schizoid) 統合失調型(Schizotypal) |
周囲を極端に疑う、孤立・無関心、奇異な考えなど |
B (劇的) | 反社会性(ASPD) 境界性(BPD) 演技性(HPD) 自己愛性(NPD) |
衝動性や感情の波が大きい、対人関係が不安定、注目欲求など |
C (不安) | 回避性(Avoidant) 依存性(Dependent) 強迫性(OCPD) |
不安や恐怖が強く、回避や依存、完璧主義に陥りやすい |
上記の表だけで「これは○○に当てはまる」と自己判断は禁物ですが、全体像をざっくり理解するには便利です。気になるタイプがあれば、個別の詳細記事でさらに具体的な症状や対処法をチェックしてみましょう。
- 自己愛性人格障害(NPD)とは?
- 境界性人格障害(BPD)とは?
…など、クラスターBについてさらに詳しく知りたい場合は、代表する疾患の詳細ページのリンクから、より深く学べます。
6. 専門用語解説
- DSM-5
アメリカ精神医学会が定める「精神障害の診断と統計マニュアル(第5版)」。
世界中の精神科医や心理専門家が診断基準として参照する標準的なマニュアル。 - 妄想性パーソナリティ障害
根拠のない「誰かに悪意を持たれている」「裏切られるかも」という疑いが強い。
例え話:いつも「自分が騙されるかもしれない」と周囲を疑っていて、落ち着かない状態。 - 境界性パーソナリティ障害(BPD)
感情の起伏が非常に激しく、対人関係における「大好き⇔大嫌い」の急転換が特徴的。
例え話:ジェットコースターのように感情が急上下するイメージ。 - 自己愛性パーソナリティ障害(NPD)
自分を過大評価し、他者を見下す一方で、些細な批判にも非常に弱い。
例え話:「自分は常にVIP待遇されるべきだ」と思い込みが強い状態。
7. まとめ:まずは全体像をつかもう
- クラスターA:奇異・風変わりタイプ(妄想性、シゾイド、統合失調型)
- クラスターB:劇的・感情的タイプ(反社会性、境界性、演技性、自己愛性)
- クラスターC:不安・恐怖タイプ(回避性、依存性、強迫性)
● 自己判断だけで決めつけないこと
「自分(あるいは身近な人)がいくつか当てはまるかも…」と思っても、最終的な診断は専門家に委ねるのが重要です。人格障害は長期にわたる特徴と生活・対人関係での支障によって判断されるので、一時的なストレス反応や性格の一部分だけでは軽々に断定できません。
● 詳しく知りたい方へ
各種人格障害(NPD、BPD、ASPD、回避性など)のより具体的な特徴・原因・治療アプローチについては、以下の記事もチェックしてみてください。
- 自己愛性人格障害(NPD)徹底ガイド
- 境界性人格障害(BPD)の治療法・対処法
まずは自分や周囲の状態を正しく把握し、必要なら専門家に相談することが、トラブルを最小限にして日常生活を改善する第一歩です。
参考文献
- DSM-5 (2013年) – American Psychiatric Association
- 厚生労働省:こころの健康 > こころの病気
- 日本精神神経学会
免責事項
本記事の内容は情報提供のみを目的としており、医療専門家による診断・治療を代替するものではありません。実際に心身の不調を感じる場合や身近な人の言動で悩んでいる場合は、専門の医療機関へご相談ください。
まとめ: 人格障害はクラスターA/B/Cで大きく3つに分かれ、それぞれに複数のタイプがあります。「何となく当てはまる気がする」「友人にこういう傾向があるかも」と感じたら、まずは全体像を押さえて、個別の特徴を深く学ぶのがおすすめです。必要に応じて専門家のサポートを受けることで、より良い方向へ向かう手がかりが見えてくるでしょう。
さらに詳しく知りたい方へ:「人格障害の基礎知識(総合ガイド)」はこちら
「もっと人格障害(パーソナリティ障害)の専門的な解説が欲しい」「各クラスターの違いや治療法を深く知りたい」という方には、当サイトの『人格障害の基礎知識(総合ガイド)』がおすすめです。ここでは、DSM-5を踏まえた詳細な分類や、実際のカウンセリング事例など、より踏み込んだ情報をまとめています。
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◆日本カウンセリング学会会員
◆日本応用心理学研究所ゼミナール会員
◆中部カウンセラースクールジャスティス総合教育センター修了
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