認知療法について
日常的な事柄、常識的な日々の中にこそ、
新しいものの発見があるのではないかということを、コンセプトに、
日々苦心して探求してきた事柄があります。
それは、無意識を中心に考える、私の思考から離れることでもあります。
また、かつての三大巨人と云われた、
フロイト、ユング、アドラーの人達のように、
権威で治療してきた彼らとちがい、
私のようなものは、なにか、もっと身近な所に、
クライアントさんの答えがあるのではないかと思ってきました。
しかし、書いてる今でも混乱があります。
進む道は、常識の内からの答えです。
それを求めてきた訳ですから、その方向に向かっていこうと思います。
日常的とか常識的とかは、いったいなんでしょう。
日々の生活を送っている私たちは、どのようにして、
この当たり前の生活を生きているのでしょうか。
間違いなく他の人と生きて、
環境に合わせて生きています。
これは人類共通ではないでしょうか。
寒い地域、温たたかい地域、温暖の差のある地域、等々。
これは、そこに住む人々と共通認識と共生関係にあります。
しかし、それだけでしょうか。
私達は言語や学習、習慣、慣習に従って生きてきています。
日本に住んでいれば、日本の社会、言語、を通し、或いは学習に依って、
共通感覚と共通認識を持つように育ってきました。
このコモンセンスを通じて、
私達は不安も心配もなく暮らすことが出来るのです。
このコモンセンスの認識の認識とは、
物事の本質を十分に理解し、
その物と他の物とをはっきり見分けることが、
心の働きと言えるでしょう。
心の働きの認知は、
「ものの受け取り方や考え方」といった意味になります。
そうです、
お気付きの方もいられると思いますが、私が出合ったのは、
「認知療法」という方法でした。
認知療法は、
1960年代初めア-ロン・T・ベックによって開発された心理療法です。
当時はうつ病治療に用いられましたが、
最近では、薬物依存症や心的外傷後ストレス障害、強迫性障害など
幅広い臨床的問題に適用されています。
認知療法では、
「苦痛と感じている人の考え方は硬直化しやすく歪んだものになりやすい」と考えます。
例えば、「考え過ぎる人」「気にし過ぎる人」などは、
「絶対こうだ!」と決めつけていたり、
「自分はダメだ・・・」とマイナスな捉え方ばかりしている人がいます。
このような人は、苛々しやすく、
落ち込みやすい傾向にある人たちの思考の硬直化があり、
これらをを緩め、歪みを正すのが認知療法です。
考え過ぎたり、気にし過ぎることで苦痛を感じてしまう人は、
物事を多面的に考えることが出来なくなっています。
自分の考えに固執し、身動きが取れなくなってしまい、
結果的に精神的な苦しみを一人で抱え込んでしまっています。
この状態に陥る背景には、
情報処理の間違いがあります。
情報処理の間違いは、オール・オア・ナッシング思考で、
これは、黒か白か、どちらかしか認めない。
間は認めない極端思考です。
次には、結論の飛躍で、不確実な情報から無理やり結論を導き出します。
読心術、証拠もないのに、他人の考えを決めつけるなどです。
このような情報処理間違いで苦しんでいる人に対して、
認知療法を用います。
先ず、物事には2つ以上の見方があること。
物事の見方はその人次第であることを教えます。
認知療法では、人間の認知の過程を
①中核信念(スキーマ)
②媒介信念(構え・ルール・思い込み)
③自動思考
の3段階で捉えています。
①中核信念(スキーマ)とは、
自分自身・他者・自分を取り巻く世界についての一定の概念のことで、
例えば、幼い頃から「頭が悪い」と親から言われ続ければ、
「頭が悪い」と思い込んで成長します。
このように自分で気付かぬうちに築かれていくのが、中核信念です。
②媒介信念とは、
中核信念をもう一歩踏み込んだ捉え方で、
「頭が悪い」ことに対して、
「頭が悪いなんて最低」
「常に努力しないといけない」
「努力しないとダメになる」と捉える考えです。
③自動思考は、
中核信念・媒介信念を経て自然に出てくる考えで、
この思考が認知の一番初めになります。
認知療法では、自動思考を経て、負の感情が生まれてくると考えます。
一般に私達は、平均的な順調に生活しているということが出来るでしょう。
しかし、逆風が吹いて、困難や不安に陥ると、
そこからなかなか抜け出せません。
調子のよい時と違って、考え込み、停止し、
気分は沈み、停止し、
もうこれから先は望みがないという所にまで至って、
感情や情緒の変化に気づきます。
うつの始まりです。
ここでは、うつについて調べてみます。
うつ病になると悲観的に考えるようになります。
「否定的認知の三微」を取り上げると、
これは、自分自身に対して、また周囲との関係に対して、
そして将来に対して、否定的に考えるようになった状態です。
うつ病の人は、「自分はダメなんだ」と自分を責め、
「みんなから嫌われている」と決めつけ、
「これから先はつらいことばかりだ」と
悲観的に考えるようになっています。
これは、うつ病という病気のせいなのですが、
本人は自責の念と将来に対する悲観なきもちで一杯になり、
悪循環に入ってしまって、抜け出せなくなってしまいます。
ここで思考を変えてみることが要請されます。
先ず、問題を自分で解決できるか、
出来なければ他の人の援助で解決できるか、といった、
客観視することが必要となります。
脱自己です。
外から眺めてみるのです。
そして、自動思考は何かを考えます。
言葉に出すのも、書いてみることもいいと思います。
そうやって、自動思考を見出したなら、
肯定的言葉、観念、思考に変えてみる練習をするのです。
これを繰り返し、繰り返しやって、
現実や真実を見出していきます。
これが先ずたいせつだと思います。
著者 心理カウンセラー 浦