隠蔽記憶(フロイト)
思い出しやすい記憶の中に、抑圧された他の記憶が隠されていることがあり、前者をフロイトは隠蔽記憶とよんだ。このような記憶は、本当に重要なもっと他の印象の代理として想起されるものであり、本当に重要なほうの記憶は、そうでない方の記憶を分析することによって、蘇らせることが可能であるが、なんらかの抵抗のために直接には想起されないものである。このように、どうでも良い記憶が保持されているのは、それ自身の内容によるのではなくて、抑圧されている別の心理内容との間に連想関係が生じるためである。より重要なほうの印象が、それよりも後の出来事の記憶の中に定着している場合を、前向き又は前進性の隠蔽記憶という。他方、時間的関係が逆の場合があり、はるか後手の心理体系が、幼児記憶に代理されている場合もあり、これを後ろ向き、又は、逆行性の隠蔽記憶と呼んだ。内容ではなく時間的近接によって記憶が代理される場合もあり、これを同時性或いは近接した隠蔽記憶という。
つづく