フロイトにおける精神分析の神経症論
フロイトは、1924年の2編の論文、「神経症と精神病」「神経症及び精神病における現実の消失」を書いている。
ヒステリー論に始まるフロイトの初期の精神病理を要約すると、エスに属する欲動が自我の検閲などによって自我には受け入れられず、無意識下に抑圧され、その状態では精神の平衝状態が保てないために、①エスの発露、②自我による拒否、超自我による監視を逃れる、という二つの条件を妥協的に満たすべく、精神症状が形成されるとする考えである。そのため、神経症の精神分析とは、無意識下に抑圧されたエスの意思化に重点が置かれていた。自由連想によって、無意識におかれた情緒活動を想起し、分析家に語ることは、言語的手段によるエスの発現の可能として代理の表現も無意識的(エスの)感情の隠蔽も必要ない状態、即ち精神症状の消退を導くことであった。
& 自伝的に記述されたパラノイア(妄想性痴呆)の一症例に関する精神分析的考察(1911年)
投影のメカニズム、投影は、不安に対する原始的防衛機制の一つである。防衛機制とは不安の対処法であり、恐怖回避といった分かりやすい防衛とは異なり、原始的防衛機制と呼ばれる。より深い不安であり、より複雑な処理といえよう。投影の場合は、心の中の問題、不安が内的な葛藤によるという自覚をとらず、外部により引き起こされたと感じるのである。一見了解が困難なほどの訴え(被害的色彩を帯びた観念)は、投影という概念によって了解可能となるのである。そして、この一見複雑な防衛機制は、未熟な心性において働く傾向があり、この傾向は乳幼児の観察からも裏づけられている。
つづく