子どもが人格障害の特性をもつ場合の対応策

2025年1月20日この記事を書いた人：心理カウンセリング浦《浦光一》 0件のコメント
人格障害

なぜ“子ども”がパーソナリティ障害に？親が知るべき兆候と対処のヒント

子どもの“激しい気分の波”や“行き過ぎた依存”、そして“家族を振り回すような行動”に、胸を痛めていませんか？もしかするとそれは、人格障害（パーソナリティ障害）の特性が早い段階であらわれているサインかもしれません。

多くの方は『子どもに人格障害なんて…』と驚き、不安を抱くことでしょう。周囲に相談しても『ただの反抗期だよ』『そのうち落ち着くわよ』と取り合ってもらえず、孤独感を抱え込むケースも少なくありません。でも、もしその状態が長く続き、親子ともに疲れ果てているなら、見過ごせないSOSが隠れている可能性があります。

この記事では、子どもに人格障害の傾向がみられるときに起きやすい具体的なエピソードや、親御さんがどんな苦しみを抱えやすいのか、そして少しでも前に進むためのヒントをわかりやすくまとめました。『どうしてうちの子だけ？』『育て方を間違えたの？』と悩んでいる方にこそ知ってほしい内容です。専門家に相談するか迷っている方も、まずはご自身の心をいたわりながら読み進めてみてください。

あなたがこれまで一人で抱えてきた重荷が、ほんの少し軽くなるかもしれません。そして、なにより“子どもの未来”を守るためにも、親としてできることは意外とたくさんあるのだと感じていただけるはずです。どうか一緒に、一歩ずつ手探りしながら進んでいきましょう。きっとあなたやご家族にとって、大切なヒントが見つかるはずです。

愛知県名古屋市の心理カウンセラー　浦光一

なぜ「子どもが人格障害」だと理解しにくいのか

「うちの子はどうも他の子と違う気がする」「なんとかこの子を助けてあげたいけれど、どう接すればいいのかわからない」——もしあなたがそう感じているなら、それは決して珍しいことではありません。子どもが人格障害（パーソナリティ障害）の特性を持つと聞くと、驚かれる方も多いでしょう。なぜなら、一般的にパーソナリティ障害は「成人期に顕在化する」と思われがちだからです。

しかし、近年の研究や臨床経験からは、10代後半～20代前半の時点で、顕著な人格の偏りや対人関係の問題、極端な感情表現などが見られ、将来的にパーソナリティ障害に発展する（あるいはその傾向が強く出ている）ケースが少なくないことがわかってきました。

そもそも子どもの場合、人格がまだ形成途上にあるため、「これは性格の問題？反抗期？それとも人格障害のサイン？」と判断が難しく、親や周囲が混乱しやすいのです。特に日本では、「子どもの問題は家庭で何とかしなくちゃ」「反抗期だから仕方ない」と思い込み、専門家に相談するハードルが高い傾向があります。その結果、子ども本人も家族も疲れ果てるほど悩んでいるのに、誰にも言えずに問題が長引くというケースが多いのです。

この記事では、「子どもが人格障害の特性をもつ場合」に想定される具体的なエピソードと、そこに潜む苦しみ、そして少しでも対処するためのヒントを探っていきたいと思います。もし、あなたが「うちの子はひどく衝動的な行動をするけれど、思春期だからだろうか…」とか、「家族に対してだけ感情を爆発させて、外ではいい子を装っているのはなぜ？」と思っているなら、ぜひ読み進めてみてください。

1. 感情の起伏が激しすぎる子ども：周囲が翻弄される“絶叫”や“涙”の日々

※本記事で紹介している事例は、いずれもプライバシーを最優先に考慮し、個人が特定されないように配慮したうえで掲載しています。具体的には、当事者の同意を得たうえで、一部の属性や背景を変更したり、複数のケースを参考にして再構成したりすることで、個人や企業を特定できないように工夫しています。読者の皆さまが安心して事例に触れられるよう、守秘義務とプライバシー保護を徹底して取り組んでおりますので、安心してお読みいただければ幸いです。

思春期の娘が攻撃的な言動を繰り返す【具体的なエピソード】

中学生のAさん（娘）は普段は明るく友達も多いが、家に帰ると突然“人格が変わる”かのように母親に暴言を吐く。たとえば、夕食のメニューが少し気に入らないだけで「こんなもん食べられるか！」「なんで私の希望を聞いてくれないの？」と大声で怒鳴り散らす。また、自分の部屋に引きこもって泣き叫び、「どうせ誰も私をわかってくれないんだ」と壁を叩いたり、時には部屋の家具を投げつけたりと衝動的な行動が目立つ。

母親がなだめようとしても「うるさい！近寄らないで！」と拒絶し、翌朝になると平然と登校していく。家族としては「夜のあの騒ぎは何だったの？」と呆気にとられつつ、Aさんが一転して笑顔でいる姿とのギャップに戸惑う。母親は「これって単なる反抗期？でもここまで荒れるなんておかしいのでは…」と不安に駆られ、夜も眠れないほど精神的にまいっている。

あなたへのメッセージ

もしあなたがAさんの母親と似たような状況にあれば、「どうしてうちの子だけがこんなことに？」「私の育て方が悪かったの？」と自分を責めてしまうかもしれません。親子だからこそ、子どもの激しい感情を受け止めようと頑張っても、一方的に暴言をぶつけられ続けると疲弊しきってしまうのは当然です。周囲から「反抗期でしょ」「年頃の子はそんなもの」と言われても、あなたの苦しみや家の中の修羅場を、本当に理解してもらえるとは限りませんよね。

①人格障害のサインかもしれない要素

境界性パーソナリティ障害（BPD）の傾向: 感情の起伏が異常に激しい、ちょっとしたことで「見捨てられた」と感じて怒りや悲しみを爆発させる、翌日はケロッとしているなど、**極端な“白黒思考”**や衝動性がしばしば見られる。
衝動的な自己破壊行為: “絶叫”や“ものを壊す”などは、子どもが「自分の苦しみを周囲に分かってほしい」という訴えを強烈に表現している可能性がある。
家族を振り回す行動: まだ思春期～青春期で人格が固まっていない時期に、こうした傾向が見える場合、「対人関係での極端な愛憎」「不安定な自己イメージ」などBPDの特徴が早い段階で現れているかもしれない。

2. 過度の依存や「見捨てられ不安」をもつ子ども：親が“離れられない”苦悩

息子が母親にべったりで自立が進まない【具体的なエピソード】

高校を卒業しても家からほとんど出ず、母親がパートに行っている間は何もせず家でゴロゴロ。母親が帰宅する時間になると、「お腹が空いた」「明日の朝ごはんは？」と当たり前のように要求し、自分で何もしない。母親が注意すると「お母さんがいないと生活できない」「捨てたら俺は死ぬんだよ」と泣いて訴え、そのまま駄々をこねる。いわゆる**「ひきこもり」**とも似た状態だが、実際には「親離れ・子離れ」ができず、依存度が高い。

父親や兄弟が「そろそろ自立して働いたら？」「バイトでもいいじゃないか」と促しても「僕には無理」「お母さんと離れたくない」と拒否。母親としては「このままじゃこの子の将来がどうなるの？」と心配だが、子どもに毅然とした態度をとろうとすると、「母さんが僕を見捨てるんだ！」と叫ばれてしまうため、結局折れてしまう。

あなたへのメッセージ

「子どもに不自由なく育ってほしい」と願っていたのに、まさかこんなふうに依存される日が来るとは思わなかった——そんな戸惑いを抱える方も多いでしょう。手を貸さなければ生活が成り立たないように見える子どもを見捨てるなんてできない、でもずっとこの状態が続くのもお互いに辛い……。悩みは尽きませんね。

②人格障害のサインかもしれない要素

依存性パーソナリティ障害（DPD）の傾向: 「誰かに世話をしてもらわないと生きていけない」という思い込みが強く、決定や行動をすべて親に委ねる。
境界性パーソナリティ障害（BPD）の要素: 見捨てられ不安が強烈で、「見捨てるなら死んでやる」という極端な表現も使用しがち。
親が罪悪感を煽られる: 子どもの「捨てる気なの？」という言葉で、親は「突き放すのはかわいそう」と感じてしまう。

3. 子どもが家族を支配するケース：言葉の暴力や巧みな操作

娘が父親のカードを勝手に使い散財【具体的なエピソード】

20代前半の娘が、父親のクレジットカード情報を勝手にオンラインショッピングで使用。多額の請求が来ても「だって可愛い服がなかったら私が惨めでしょう？」「お父さんは私を虐待してるんだ」と被害者ぶり、逆に父親を責める。父親は「確かに昔は仕事が忙しくて娘に構えなかったかな」と負い目を感じ、「ここで強く言ったら娘が家出するかも」と思い、泣き寝入りして支払いをしている。

娘の怒りの矛先は母親にも向かい、「どうせお母さんは私の味方じゃないんでしょ」と家族全員を分断するような発言を繰り返す。妹や弟は娘の激しい言動におびえ、一緒に生活するのが苦痛で仕方ない。両親は「いったいどうすれば？」と途方に暮れているが、娘が外面だけはよく取り繕うため、他人には「そんなに問題があるように見えない」と言われる。

あなたへのメッセージ

もしあなたがこうした事例を経験していれば、「親としては子どもの非行を止めたいけど、子どもに強く言うとどうなるかわからない」という恐怖心や不安に苛まれているかもしれません。愛情と責任感ゆえに、子どものわがままを許容してしまうことが積み重なると、子どもがますます家族をコントロールしやすい環境ができてしまうのです。「こんな状態がいつまで続くの？」と怯えながら生活するのは、とても辛いことです。

③人格障害のサインかもしれない要素

反社会性パーソナリティ障害（ASPD）の傾向: 規範や他人の権利を軽視し、目的のために嘘や脅し、操作を平然と行う。家族の金銭や物品を勝手に使っても罪悪感が薄い。
自己愛性パーソナリティ障害（NPD）の要素: 「私が欲しいものを手に入れるのは当然」という思考が強く、家族を道具のように扱う。指摘されると激しく怒ったり、逆に被害者を装うなど巧みな操作を見せる。
家族を分断する戦略: “ペアレンツ・ディバイド”とも言われるが、子どもが親同士を対立させ、「お母さんはわかってくれるけど、お父さんはダメ」などと言って家族間の連携を壊すことがある。

4. もう限界…でも“子ども”だからこその複雑さ

ここまでの例のように、子どもが人格障害の特性を強く示す場合、「親としてどう対応するか」という問題に加え、「子どもの将来をどう守るか」という視点も加わります。子どもが家族を攻撃したり、依存したり、支配したりする行動パターンには、必ずしも本人が悪意を持っているわけではなく、未熟さゆえの適応戦略である場合も多いのです。親としてはそれを理解しつつも、家族の平穏を守らなければならないというジレンマを抱えることになります。

家族が疲弊する背景

「まだ子どもだから」という社会的圧力
- 親や兄弟が「こんなこと、外には言えない」「学校の先生に言ったら子どもの評判が下がるかも」と懸念し、相談を躊躇する。
自立への難しさ
- 子どもが未成年の場合、引っ越しや一人暮らしの選択が難しく、家族内で解決するしかないと思い込む。
親の罪悪感
- 親自身が「子育てに失敗した」という自責の念を抱え、子どもの問題行動を許容してしまう。子どももそこに付け込み、家族を操作することがある。

5. 対応策のヒント：専門家との連携と家族内ルールの構築

ここからは、子どもが人格障害の特性を示す場合の大まかな対応策について、いくつかのヒントを挙げます。完璧な解決を目指すのは難しいとしても、少しずつ家族の負担を軽減し、子ども自身にも適切なケアを受けさせる道を探ることが重要です。

家族会議や家庭内ルールの設定
- 子どもが物を壊したり暴言を吐いたりする行為には、どのようなペナルティを設けるか（話し合いの場を設ける、専門家に相談するなど）。
- 依存的な行動が見られる場合、どこまで親がサポートし、どの部分は子ども自身が責任を負うかを明確にする。
- 可能であれば、子どもも含めた家族全員の同意を取り付ける形が理想。
専門家（心理カウンセラー、児童精神科医など）への早めの相談
- 子どもの言動を「甘え」や「反抗期」と片付けず、「これは専門的支援が必要かもしれない」と気づいた時点でアクションを起こす。
- 児童相談所、スクールカウンセラー、教育委員会、地域の保健センターなど、アクセスできる窓口は複数ある。どこからでもいいので相談してみることで次のステップが見つかる可能性がある。
親自身のストレスケア
- 親が子どもからの激しい攻撃や依存にさらされると、メンタルが極度に疲弊し、二次被害として親がうつ状態や身体症状を引き起こすこともある。
- カウンセリングやSNS上のサポートグループなど、親が自分の気持ちを吐き出せる場を確保する。
学校との連携
- 子どもが学校で問題行動を起こしていたり、逆に学校では“いい子”を演じている場合も、担任やスクールカウンセラーとの情報共有は有効。
- 家庭での問題や人格障害の懸念を適切に伝えれば、学校側も支援プログラムや調整を検討することがある。

6. 実際にあった改善のエピソード

境界性傾向の娘と母親の家族療法
- 激しい気分の変動や「見捨てられ不安」を持つ高校生の娘に対し、母親が当初は「私が悪いのかも」と自分を責めすぎていた。
- 家族療法を通じて、娘の特性（BPD傾向）が背景にあると理解し、“バリデーション”（娘の感情をまず肯定的に受け止める）と“適切な境界線”（母親が何でも許容するのではなく、無理な要求は断る）を使い分けるよう練習した結果、徐々に親子間の衝突が減少。娘も「お母さんは私を見捨てないが、何でも受け入れるわけでもない」と理解し、衝動的な行動がやや落ち着いてきた。
強い自己愛性傾向を持つ息子が独立に成功
- 大学生の息子が「親の金は俺の金」と言わんばかりに浪費を繰り返し、家族を支配していたが、父親が弁護士に相談して「金銭管理のルール」を明文化。
- 息子に対して「これ以上の不正利用があれば法的手段も検討する」と宣言したところ、息子は激怒したものの、外面を重んじる自己愛性人格障害の特性ゆえ「裁判沙汰になったら自分の評判が下がる」と察し、バイトと借金で自力で支払うように。
- 時間はかかったが、息子は最終的に就職し、家族との距離を保ちつつ自立の道を歩み始めた。

7. あなたの家族関係をあきらめないで

子どもが人格障害の特性を持つ場合、親として「こんなに苦労するなんて思わなかった」「どう育てればよかったの？」と責任を感じ、自分を責めてしまうかもしれません。しかし、人格障害の発現には生育環境だけでなく、遺伝的要因や社会的影響など多くの要素が絡んでおり、必ずしも親のせいばかりではないのです。

大切なのは、今の状況からどう進んでいくかです。子ども自身も苦しんでいる場合がありますが、その苦しさを家族にぶつけるあまり、親を含む周囲が疲れ果てるケースが少なくありません。あなた自身の人生やメンタルを守りながら、子どもに適切なサポートを受けさせるためにも、

問題を客観視する勇気
- 「この子は人格障害かもしれない」と認めるのはつらいが、そこから始まるものもある。
周囲や専門家の助けを借りる
- カウンセリング、家族療法、教育機関、児童相談所など、アクセスできるリソースを積極的に活用。
親自身のセルフケア
- 親が倒れてしまっては元も子もない。自分の趣味やリラックス方法、相談相手を確保することを後回しにしない。

もしこの文章を読んで、「うちの子にも当てはまるかもしれない」と思うところがあったら、一人で抱えこまずにぜひ専門家のもとを訪れてみてください。もしかすると、早めに治療や支援を開始することで、子どもの人格障害の特性がより安定し、家族も少しずつ安心を取り戻せる可能性があります。子どもを助けるためにも、まずはあなたが情報を得ること、そして、行動を起こすことが重要です。

子どもとの衝突や心配事で、心が折れそうになる日々もあるでしょう。けれども、「どうせ無理」とあきらめてしまうと、そこから先の成長や回復の芽を摘んでしまうかもしれません。人格障害の特性を持つ子どもだからこそ、「本人の力で少しずつ自分の生きづらさを改善できるようになる」チャンスが存在します。そのために、家族ができることは思った以上にたくさんあるのです。

最後にもう一度、「子どもが人格障害を持っているかも」と思うのは、親として非常に辛いことですよね。自分を責めたり、子どもを恨んだり、そんな感情が渦巻くかもしれません。でも、あなたが愛情と勇気をもって一歩踏み出すだけで、きっと道は開けてきます。どうかあなたの家族関係をあきらめず、必要な支援や対処法を探りながら、一歩ずつ前進していってください。あなたの行動が、子ども本人の未来だけでなく、家族全員のより良い明日をも作り出す大きなきっかけになるはずです。